narao セレクト 追加編2 |
ガルムントのローカットタイプのマウンテンブーツ。ローカットタイプで、見かけは可愛い感じですが、ゴアテックスと、かなりハードな硬く厚いビムラムソールを搭載していて、意外と本格的。
ところで、ゴアテックスって何者? って、おっしゃる方もいらっしゃると思います。ご存知でも、結局、理屈は、雨合羽や、雨靴と同じでしょう。と、・・・
まず、ゴアテックスは、正常に機能している限り、水を通しません。通しにくいのではなく、通しません。でも、ここまでは、ビニールだって同じです。違いは、こんな夏の雨の日に、両方を30分ずつ着てみて、外にじっと立ってみるだけで歴然とします。ゴアテックスだって、暑いです。暑いのですが、なんとか耐えられる程度だと思います。非ゴアテックスだとどうなるか、汗がしたたり、服は間違いなくぐっしょりです。動けばどうなるか、想像するのは容易いのではないでしょうか。
それは靴でも同じです。ゴム長靴だと汗で水が溜まるくらいの状況でも、ゴア搭載のものなら大丈夫です。その快適性は別物です。
ところで、最近、登山ブームだったりして、その場合の靴下なのですが、いまだに厚手のウールやコットンのソックスが良いと思われている方も多いようなのですが、ゴア搭載ののブーツの場合はそれは間違いだと思います。通気性の高い化繊素材のものがベストです。個人的には、シルク素材の薄手の5本指ソックスに、普通の化繊素材のソックスを重ねる。これだとほぼ蒸れません。ウールや、コットンのものだと、意外にすぐにぐっしょりしてしまうのです。夏場にゴアだと雨降った時は良いけど暑いからなあ。こういうネガティヴな意見は、そういう方から生まれているような気がしています。
もっと、的確で説得力のある意見は無いかなあ。と、思って探してみたら、質問箱に寄せられた、「ゴアテックスって意味あるんですか?」的質問に対して、とても分かり易い回答をみつけたので、添付しておきます。
「雨をはじき、ムレを外に出す」機能を持った素材を"防水透湿性素材"と言います。そして、防水透湿性素材を使用したウエアを"ハードシェル"と呼びます。レインウエアもハードシェルの一種です。
パタゴニアで1~2万円で買えるハードシェルはないと思うのですが。現行品で最も安いのがレインシャドージャケットで、これは3万円弱の価格です。
この「雨をはじき」という文言は、言葉そのままだと"撥水性"のことになりますが、完全防水ではないが強力な撥水処理を施したウエア(当然ですが透湿性はハードシェルより高い)を"ソフトシェル"と呼びます。ソフトシェルならパタゴニアでも2万円弱の製品があります。
登山用の機能性素材に少し詳しくないと、カタログの文言だけではハードシェルとソフトシェルを混同することがあるので注意が必要です。
ハードシェルに使われる"防水透湿性素材"の代表格がゴアテックスです。これはゴアテックス社による素材で、各アウトドアメーカーはゴアテックス社から素材の提供を受けてウエアを開発・製造しています。
ただ、ゴアテックス製のウエアはどのメーカーでもジャケットだけで2万円前後、上下セットで3万円あたりが最も安価な製品になるので、1~2万円あたりの価格帯の製品は、ゴアテックスではなくウエアメーカーがオリジナルで開発している防水透湿性素材を使用している可能性が高いです。
防水透湿性、すなわち「水は通過させないが水蒸気は通過させる」機能のメカニズムには、大きく分けると2種類あります。
1つ目は「多孔膜メンブレンによるもの」で、水分子は通過させないが水蒸気分子は通過させる程度の大きさの"穴"が無数に開けられた膜を使う、というものです。ゴアテックスがその代表格です。
もう1つは、「親水性の無孔膜コーティング(またはメンブレン)によるもの」で、穴がない親水性の素材がウエア内の水蒸気を吸湿し、ウエア内外の湿度勾配によってウエアの外に蒸散させる、というものです。
ま、ゴアテックスも湿度勾配がなければウエア外に透湿することはないので、透湿性能を湿度勾配に依存しているという点では同じですが。
絶対的な性能はそれぞれの素材の性質によるので一概には言えないのですが、後者の無孔膜コーティングの方が安価にできるので、1万円台からある各メーカーオリジナル素材を用いたハードシェルは、たいていこちらの素材を使っています。
理屈で考えると、単に"水蒸気の通過を阻害しない"多孔膜メンブレンより、"積極的にウエア内の水蒸気を吸湿する"無孔膜コーティング系の素材の方が、多くの状況で透湿性能を上げやすいはずです。現に多孔膜メンブレンの代表格であるゴアテックスも、現在のものはメンブレンの内側に無孔膜コーティング層を設けています。
現在は大部分のウエアメーカーがゴアテックス製品を展開する一方で、オリジナル素材を用いたハードシェルのラインアップも展開しています。そのたいていはゴアテックス製品より安価な価格設定にした"廉価版"という位置づけです。
少し事情がことなるのはモンベルとパタゴニアでしょうか。
モンベルはオリジナル素材を2種類(ドライテック系とハイドロブリーズ系)開発しているのですが、ドライテック系の方はゴアテックス製品と同価格帯のモデルもラインアップしていますし、ウエア以外のシュラフカバーなどの製品ではドライテック系の方をメインにしてモデル展開をしています。
またパタゴニアはゴアテックス製品をほとんど作らず(数年に一度、想い出したようにゴアテックス製ウエアをラインアップすることがある程度)、メインは完全にオリジナルのH2Noという素材でモデル展開しています。価格帯も他社ゴアテックス製品と完全に同価格帯(日本ではむしろ高価格帯)です。
コロンビアはオムニテックというオリジナル素材を開発していて、やはりメインはそちらに移行しつつあります。
私はモンベルのゴアテックス製ジャケット、スーパーハイドロブリーズ製のレインスーツ(上下セット)、パタゴニアのH2No製のジャケット、オンヨネのブレステック製のレインスーツを持っています。ゴアテックスとH2Noは複数持っています。
防水透湿性の性能自体は体感的にはどれもほぼ同じですし、簡単な実験をしてみてもやはり同等です。
ウエアとしての総合的な機能性は、素材だけではなく各部の仕様に依るわけですが、価格を考えなければベストは文句なしにパタゴニアです。ま、3万円のモンベルのゴアテックス製ハードシェルの倍以上の値段がするのですが、性能も倍違うかと言われれば微妙ですが、モンベルより良いのは確かです。
透湿性能(ムレを出す性能)だけで言えば、オンヨネのブレステックという素材で作られたウエアも良いです。これも1万円ちょっと程度の価格帯のレインスーツ(上下セット)で、レインウエアとしては最も安い価格帯になるのですが、いくつかの状況では明確にゴアテックスより透湿性が良い、と感じます。
モンベルは機能と比較した価格が非常に安いのが魅力です。マムートあたりの5万円のジャケットとモンベルの3万円のジャケットで、機能的には同等か、むしろモンベルの方が良いくらいですから。ま、マムートが高すぎるのですが。(マムートを扱っているショップの店員が「マムートなんて"高いだけ"ですよ」と言ってましたが、私も同感)
スーパーハイドロブリーズ製のレインスーツで1万円あたりですが、これも仕様的にはレインウエアとしては完成されているので、この価格は大バーゲンだと思います。
コロンビアは所有したことがないので判りません。
ノースフェイスはアメリカのノースフェイス本体とはまるきり別で、実はその正体はゴールドウインです。
結局日本メーカーなので無難な造りと仕様なのですが、細かな仕様が私の好みとは微妙にピントがずれていて、数着入手してもすぐ嫌になって手放しているので、長く所有したウエアはありません。
タラスブルバは・・・何故かまったく食指が動かないですね。今まで興味を惹かれたモデルもないですし。ミレー、ロウアルパイン、アゾロも同様です。
マムート、アークテリクスは価格が高すぎるので守備範囲ではありません。
性能的にはゴアテックスでなくても1万円当たりの価格帯の製品で十分"透湿"を実感できます。
試しにレインウエア上下を着て30分ほど動かずにじっと座ってみると判ります。
ビニールカッパ(防水性は完璧だが透湿性はゼロ)を着こんで30分ほどじっと座っていると、冬でも身体から出る水蒸気がカッパ内側で結露して"びしょびしょ"に濡れます。防水透湿性素材を使ったウエアだと、ウエア内側はまったく結露しません。
むろん、これらの素材は結局のところ、ウエア内外の湿度勾配によって湿度が高い方(ウエア内側)から低い方(外側)に水蒸気を放出しているだけなので、暑くて汗をかくような時に、その汗までガンガン放出してくれるわけではありません。汗をかく量が激しくてウエア内が水蒸気飽和に達してしまえば、激しく蒸れることになります。透湿するより身体から水蒸気が"供給"される方が早い場合に飽和に達するわけですから、これは当然のことですが。
ですが、雨の中ででも着てみれば、その絶大な効果はすぐ判ると思いますよ。
ゴアテックス登場以前は、森林限界を越えた山で雨に降られると簡単に死人が出ました。私もその頃は体力が有り余る年齢でしたが、危険な場面に何度も追い込まれました。
それがゴアテックスの登場によって本当に劇的に変わりました。私は初めてゴアテックスのウエアを着て行動した時は、マジに感涙に咽びましたもん。